五味康祐を読む

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連続の台風・長雨、週末外に出る機会がめっきり減っている。そんな時は部屋でじっと好きな音楽を聴きながら本を読むのが一番である。インターネットでオーディオ関係を調べていて出会った懐かしい名前「五味康祐」、その人のエッセイ集を2冊読んだ。中高時代にオーディオ雑誌でよく目にしたその名を、恥ずかしながら「ごみこうすけ」と記憶していた。正しくは、「ごみやすすけ」である。剣豪小説家でありオーディオ評論家と思っていた。これも誤りでオーディオ評論をするのではなく、いい音楽を聴く為の悪戦苦闘を綴っておられたのだと今回わかった。
まず1冊めは、『西方の音』(中公文庫刊)。作者の西洋音楽への憧憬・洞察といったものが、オーディオ機器への果てのない願望となった事などを綴ったエッセイ、といって良いのではないか。オーディオ機器を巡る批評や悲喜こもごもの出来事を通じて西洋音楽への熱い思いが伝わってくる。それにしても1曲1曲への踏み込みが半端でなく、実体験と結びつける語り口も鋭い。
そして2冊めは、『いい音 いい音楽』(中公文庫刊)。上記『西方の音』のあとで読んだため、各章で文庫本で2ページほどの短い文に込められた思いは十分に伝わる。FMが音楽ソースとしてレコードと同等かそれ以上に尊ばれている状況は東京ならではか。今でも関西はFM電波の状態が悪いなと感じることが多い。そして、オープンリールテープの音の良さを折りに触れ述べておられるが、当方の少ない経験からもその通りと思う。まさに今見直されているのは、その証しであろう。あとがきに娘さんが書かれた「父と音楽」は、理想的な親子の心の交流が感じられ、うらやましい。

今日はこれから、PAC第108回定期演奏会に出かける。指揮は芸術監督・佐渡裕、曲目はハイドン作曲のオラトリオ「天地創造」である。五味節を堪能した直後に、この曲を如何に感じることが出来るか。今この日記を打ち込みながら、同曲を聴いて予習している。