辻井伸之『debut』を聴く

f:id:hinoikelife:20190223114429j:plain

某オーディオ誌最新号の新譜評で、辻井伸之が昨年発表したアシュケナージ指揮によるショパンのピアノ協奏曲2番が高評価であった。その事が頭にあり、昨晩覗いた“りずむぼっくす芦屋店”で上記のアルバムを購入した。価格は新品の半額ほどしたが、状態がよく音も最高に良かった。何より演奏が大変素晴らしかった。
このアルバムが出たのは2007年。私が彼のことを初めて知ったのはヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールで優勝した2009年であったが、そのずっと前から活躍していたんだなあ。改めてインターネットで検索すると想像よりはるかにたくさんのアルバムを発表している。その中には自作曲の物もいくつかある。
そして今回デビューアルバムの中で一番気に入ったのも自作の曲であった。「花水木の咲く頃」というその曲は、レコーディングを行った岐阜でそこに咲いていた花に触れたり、香りを楽しんでいるうちに、心の中で感じ取った美しさを表しているそうだ。曲はまさしく花の肌触りや香り、風までも感じるような爽やかさが漂っていた。
もちろんショパン、リスト、ラヴェルによるピアノ曲も良かった。リストの「愛の夢 第3番」は昨年暮れからチェロで悪戦苦闘している曲だが、彼のはやや遅めのテンポで一音一音がしっかり聞き取れる。もう少し早く知っていればと悔やまれた。

 辻井伸之氏は平成元年生まれの30歳。7歳の時から大きな演奏会で腕前を披露していたそうだから、すでにベテランの域に到達しているのであろう。新譜評にあったこれまでの彼のアルバムの中で最高と言われる演奏を早く聴いてみたくなった。