一喜一憂(その2)

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2枚の写真は手前の桜と背景の松との位置関係が微妙に異なっている。わかるだろうか。

文字の可視化、そんなことを考えさせられた。
単語を、言葉を訥々と紡いでいく。すると、親子ほど歳の離れた姉妹の間の濃密な空気が、生々しい息遣いまでもが見えるような錯覚に陥る。先日、英国の国際文学賞であるブッカー賞の最終候補にノミネートされた小川洋子氏著『不時着する流星たち』に納められた10章の一つ、『誘拐の女王』を読んでの感想である。
おそらく多重人格者である姉が、正確には親の再婚・離婚にともなう数ヶ月の間だけの関係、その短い間に妹である「私」に垣間見せた世にも不思議な世界が綴られている。その理解し難い世界が、著者の選び抜かれた言葉によって、あたかも現実のように「私」とともに読み手である「わたし」にも伝わってくる。
それとともに、本章の題材となったアメリカ・イリノイ州出身で、一清掃夫として生涯を閉じた、無名の絵物語作者、ヘンリー・ダーガーにも興味をそそられる。