冬の読書2019−20;プリズンホテル編

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公園では早くも土筆が顔を出していた。

恥ずかしながら、このたび浅田次郎の小説「プリズンホテル」を初めて読んだ。かなりの衝撃だった。設定から、セリフから、展開のスピード感から、何から何までインパクトがあった。文庫本4巻に及ぶ長編がぐいぐいと心を惹きつける。中弛みどころか、寝る時間を削ってでも読み続けないと落ち着かない。こんな強烈な小説と出会ったのは久しぶりだ。主人公である木戸孝之介の言動に吐き気をもよおしているうちに、自分の中に潜む木戸孝之介的矛盾に改めて気づかされるのである。「男はやさしいだけじゃいけねえ。強くって、やさしくって、辛抱のきくてえのが。本物の男なんだぜ」、こんなくさいセリフを素直に納得させられた。この小説を勧めてくださった書店のご主人は、「これを読んだとき天才が現れたと思った」と云われていた。納得である。そして大団円となる日本文芸大賞受賞挨拶のシーンでは、不覚にも涙が止まらなかった。