ヴァルヒャ演奏による「フーガの技法」を聴く

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バッハ作曲「フーガの技法」LP。盲目のオルガニスト・ヴァルヒャ演奏による1956年録音。

皆川達夫著・『バロック音楽』(講談社学術文庫刊)も終盤に差し掛かり、J.S.バッハの偉業を「バロックの大成」という章立てで綴ってある。その中で「フーガの技法」は、彼自身の音楽技法の総決算ともいうべき作品と紹介されている。
私は大学の教養課程にある音楽の授業で、毎週広い教室で立派なオーディオ装置(たしかスピーカーはタンノイの大型キャビネットだった)から流れるバロック音楽の調べに魅了されていた。また、ヨーロッパ赴任時に時々耳にした教会のパイプオルガンの音も忘れがたい。そんなこんなで、2年ほど前に中古ショップ・りずむぼっくす芦屋店で購入していたヴァルヒャ演奏によるLPレコードを引っ張り出した。
そもそもフーガとは何ぞや?レベルなので音楽理論的なことは皆目分からないが、ライナーノーツにかなり詳しく解説があった。主題を繰り返しつつ全体の統一性を保つことがフーガであることらしい。特に後半はカノン(輪唱)の変奏曲になり、最終的に鏡のフーガ(上声部と低音部が対称形で曲としても成り立っている)になっているとのこと。元来、バッハ作曲時の曲順すら定かではないらしい。それでもいろいろな研究者により整理された「フーガの技法」は素晴らしかった。それは、技法がよくわからない私にとっては、ひとえにヴァルヒャの純粋無垢な響きを聴かせる演奏の賜物かもしれない。こんな音楽を大聖堂の中で聴いたらさぞかし感動するだろう。なんでドイツにいた頃はクラシック音楽に爪の先ほどの興味も持たなかったのか、後悔することばかりである。