ビールの思い出

平凡社編集部編、『作家と酒』。著名な小説家や画家などによる酒にまつわる話が一人あたり3〜5ページ、多くて10ページほど。まだ読み始めだが各人各様の酒の飲み方、向き合い方が面白い。

「まずはビール」と軽く扱われる飲み物だが、奥は深い。
ビールに限らず、大学へ入るまで酒を口にしたことがなかった。大酒飲みで酒乱の気があった父を見て育った影響と思う。それが、大学入学と同時に暮らすことになった東京の学生寮でいきなり大量のビールで洗礼を受けた。寮生全員が詰襟で出席するという、当時でも化石のようなバンカラ風行事やしきたりが多くあった。我々新入生4名はブルーシートの上に置かれた椅子に腰掛ける。一人ずつバケツを足元に置いて。4年生から順番に乾杯を求められる。文字通り飲み干す。最後は当然のごとく意識はなくなり、翌朝ひどい頭痛と共に昨晩の悪夢を僅かに思い出すのみ。そんな初めて飲んだビールの味を年齢を重ねるにつれ懐かしく思い出す。口に含んだ時のえぐい苦さや青臭い香りを、もう一度味わえないものだろうかと。