惚れる

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カンチレバー上部の曲面に惚れた。ゴールドリング社IM型カートリッジ “2100”のことである。ボディーの滑らかな質感がここに集約されている。スタイラスを掃除するためにヘッドシェルをトーンアームから取り外し、上下を逆さまにした状態で眺めるたびに見惚れるのである。そしてカンチレバー基部の黄金色が華を添えている。さらには、ヘッドのG文字表面は細い筋状にカットされ見る角度で表情を変える。こんなカートリッジが他にあるだろうか。
この美しいカートリッジから醸し出される音もまた素晴らしい。ロックのような激しい音楽には向かない。あくまでクラシック、それもオーケストラよりも四重奏団などの小編成やソロで魅力を発揮する。今聴いているグレン・グールドの「ゴールドベルク変奏曲」新盤(没年の前年1981年のデジタル録音盤)では一音一音の美しさを余すところなく伝えてくれる。13㎝小径コーンから低音の沈み込みや鉄線の震えが生々しく響く。一方でジャズにも見事に適応する。アート・ペッパーの名盤「ミーツ・ザ・リズムセクション」(音の良い盤として先達からお借りしたもの)ではアルトの素晴らしさはもちろんだが、ベースやドラムの音抜けがなんともいえず心地よい。スピーカーサイズが2倍・3倍になったように拡がりを感じるのだ。
ゴールドリング社は115年前の1906年創業という。作り続ける伝統の力に感謝と尊敬である。