第119回PAC定期演奏会に行った

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指揮をしている時より緊張している?サイン会に臨むウォン氏(手前)とメネセス氏。

今シーズン早くも3回めの公演。前半は、アントニオ・メネセス氏をソロに迎えてのショスタコーヴィッチ作曲チェロ協奏曲第1番。後半は、マーラー作曲交響曲第1番『巨人』。指揮は、いずれもシンガポール出身の若手カーチュン・ウォン氏。
ソロのメネセス氏は、4年ほど前にマリア・ジョアン・ピリス氏のピアノとデュオ公演以来で、2回め。その時は正直抑揚の少ない演奏に物足りなさを感じた。しかし、その後クラシック音楽関係の雑誌記事や書籍で氏のチェロ界における実績や影響力の大きさを知るに及び、次の機会を楽しみにしていた。今日の演奏を聴き、前回の感想はひとえに自分の知識・経験の少なさによるものだと分かった。ソリスト用としては響きが控えめと思われる楽器、強弱やアクセントを抑えた演奏、決して派手ではない。けれども、3楽章カデンツァでの演奏は淡々とした中に確固とした力強さが感じられて、とても説得力があった。厳しい寒さの中で生き抜く生命力とでもいうのだろうか。
後半の『巨人』は、指揮者の若さあふれるキビキビとしたリーダーシップに、ようやく実力を発揮し始めた新メンバーを交えた大編成オーケストラが一体となり素晴らしい演奏だった。カーチュン・ウォン氏はとても丁寧に指示を与えていた。指先の細かな動き、腕の振りの強弱、時に大きく踏み出し体を傾け、全身で意図を伝えているのが素人にもよく分かった。それに精一杯応えるPACメンバー。ともに演奏しながら暖かく見守る指導者たち。観客である自分にとっても素晴らしい経験だった。