大連のタトゥー建築 その1

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中国北部大連の経済開発区にある飲食店街でタトゥー建築に遭遇した。「タトゥー建築」とは、2004年頃仕事で訪れたスロバキア東部の田舎町で見かけた数多くの外壁に塗装で装飾を施した建物に自分で勝手に名付けた総称である。その後、ドイツ赴任時に訪れたミュンヘンで数多くの傑作タトゥー建築に出会った。これらは、都会で時の権力者や大富豪が権力と金で築いた建築史に残るような名建築の美しさを、限られた資金と材料で地方の権力者達がまねたことが発祥と推測される。いわば正統派のタトゥー建築である。それに対してもっと気楽な、落書きの延長のようなポップなタトゥー建築も多い。
今回出会った建物達は皆、後者に属するものである。窓一つない退屈な壁面に何か彩りを施したくなるのは、自然な欲求であろう。そこにこの浮かれた絵がある。この商業街が夜の街を兼ねていることを思えば、必然的な図柄である。
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一方こちらはどうであろう。路地の入り口でミサイルのような棒を持った巨大なにやけた猫の像の横に競走馬の絵である。薄汚れた壁面の一部だけキャンバスの下塗りのように塗装し、四頭の馬が競い合うというよりもじゃれ合いながら走っている。抑えた色彩の効果もあり立派な装飾になっている。
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最後のこちらはカラフルな配色で抽象的な図柄が窓を取り込むように、窓と一体化するように描かれている。特に右の赤い模様は壁面の単調さに少し立体感を持たせるようになっており、多分に正統派の香りがする。さらに秀逸なのは右端に写っているブルーのトタン板で出来た壁面だ。汚れを隠すためか、日射を遮るためか、その目的は定かではない。しかし、その斜めに切断された意匠が素晴らしい。30年以上前に流行ったポストモダン期の建築を思い出させる。これらは一体誰が仕組んだのだろう。単なる偶然とも思えない。
実は、この地の異色装飾建築群はこれだけではなかった。