ヨーヨー・マからのメッセージ

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ゴッホのひまわり」という品種だそうだ。確かに花びらが一枚ずついろんな方向にねじれている。

ヨーヨー・マの新作アルバム『SIX EVOLUTIONS』を聴いた。マにとって3度目のバッハ・無伴奏チェロ全曲アルバムである。印象を一言で表すとしたら、「力強い演奏」というのだろうか。前2度の無伴奏は持っておらず、ベスト盤『CANTABILE』にある「1番メヌエットⅠ/Ⅱ」(1996年録音、当時41歳)と比較すると、今回(2017年録音、当時62歳)の方が明らかにスピード感があり、抑揚がはっきりしている。まるで年齢が逆のようだ。録音技術、あるいはエンジニアの優劣もあるかもしれない。しかしこの確信に満ち満ちた堂々たるアーティキュレーション(この言葉が当たっていることを願う)は演奏者によるものに間違いない。じっと耳を澄ましていると曲の世界へ吸い込まれるようだ。
手元の他の演奏家による無伴奏(カザルス、マイスキー、クニャーゼフ)と聴き比べてみたが、私にはいずれも優劣はつけられない。わかるのは印象の違いのみである。決して内向きではなく、かといって誇らしげな威圧感もなく、ただ力強く抱きしめられているようだ。この演奏によって困難に立ち向かっている多くの人が勇気づけられるに違いないと確信する。

ラーナーノーツにマ自身が書いている。「I invite you to join on this adventure, to listen and be inspired by the helpers in your own life.」。世界最高の演奏家が贈ってくれたメッセージ。まずは自分のHelpersから思い返してみようと思う。

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CD小冊子より