第112回 PAC定期演奏会

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神戸生まれで日本最初期の西洋音楽作曲家、大澤壽人(ひさと)。[ウィキペディアより]

PAC2018-2019シーズンは早くも5回目、丁度中盤。指揮者はレジデント・コンダクター、岩村力氏。2017年10月に「若きヴィルティオーゾの競演」公演を聴いた際に指揮をされたが、定期演奏会は2011年以来8年ぶりとの事。
曲目が非常に多彩。第一部は、1906年神戸生まれで主に関西で活躍するも47歳で早世した作曲家、大澤壽人の曲から小品を7曲。プログラム冊子に指揮者・岩村氏が記している。『捉えどころがないように響く音群の中に、(中略)ふとした瞬間に現れる日本のメロディ。この一筋の光明に落ち着きを探すとき、深い部分で日本人のDNAがバイブレートします。(後略)』と。まさしくその通りに現代音楽的な響きの羅列の中になつかしい日本を感じた。
第二部は、バイオリンのソリストにアン・アキコ・マイヤース氏を迎えて2曲。まずは、彼女の依頼により作曲され遺作となったラウラヴァーラ(名前すら初めて目にした)作曲、“ヴァイオリンと管弦楽のための「ファンタジア」”。14分ほどの曲中ほぼずっとソリストが弾いているというのは初めての経験。曲名の通り繊細な高音の伸びやかな優しい音色が印象的な曲だった。2曲目はラヴェル作曲の「ツィガール」。曲名はロマ(ジプシー)のことだそうだ。音楽理論的な事はわからないが、前回の定期演奏会で聴いたロマの曲とも共通するリズム・曲調が感じられた。演奏するマイヤース氏がダンサブルな部分では時折体を揺らし今にも踊り出しそうだったのが印象に残った。それにしても女性なのに力強い素晴らしい演奏。アンコールには、彼女のおばあさんが一番お気に入りだったという「荒城の月」を披露。思い出が蘇るのか、思い入れたっぷりでジャズっぽさもある、これまた素晴らしい演奏だった。
それからこれは家に帰ってから知った事だが、彼女の使っている楽器はこれまでで最も高額で取引された物だそうで、その額は何と約1600万ドル(今で17億円以上)!匿名の所有者から終身貸与されているとの事だ。すごすぎる。だからという訳ではないが、彼女の奏でるその楽器の音は前から4列目ほぼ中央という席で想像を超えた芳醇な響きであった。f字孔から湧き出してくる音が見えるようであった。
休憩を挟んだ第三部は、リムスキー・コルサコフ作曲「シェエラザード」。曲名こそ目にした事はあるが、初めて聴く。千夜一夜物語をもとにした交響組曲だそうだ。これまた冊子に岩村氏が記されている『ダイナミックな構成、ファンタジーあふれる展開.....心を砕いて作り上げる要素が多くあります。PACの最高に瑞々しい波長が共鳴するといいですね』の言葉通り、メンバーの呼吸が見事に合っている事に感動した。そして今回は女性奏者がとても多かったのも印象に残った。