二度目のハーンとドイツ・カンマーフィル

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兵庫県立芸術文化センター大ホール前ホワイエ(芸文HPより)

昨日午後、芸文にて行なわれたパーヴォ・ヤルヴィ指揮によるドイツ・カンマーフィルハーモニー管弦楽団ヒラリー・ハーンの演奏会に出かけた。今年最後の演奏会、それもレコーディングも含め世界的に活躍する指揮者とオケ。そして2度目のヒラリー・ハーン。とても楽しみにしていた。
1曲目の「ドン・ジョバンニ」序曲は、正直よくわからないまま終わってしまった。ならし運転といったところか。
2曲目モーツァルトのヴァイオリン協奏曲5番で、待ちに待ったハーンが真っ赤なドレスを纏って登場。今回はメガネをかけてないこともあり、音色の美しさと共に華やかさが感じられた。相変わらずの正確無比な弓運び。どうやれば、あんなに体を動かしながら弓を楽器に直角に当て続けられるのだろう。それに合わせた訳でもなかろうが、カンマーフィルの面々も実に動きがダイナミックだ。全員がソリストかと思わせるほど体全体で表現している。PACオケも取り入れるとよいかも。ハーンは時折オケメンバーへ笑顔を向け、終始楽しそうに演奏していて、こちらもハッピーであった。
ソロのアンコール2曲も良かった。1曲目はCDを持っているバッハのパルティータ3番からプレリュード。2曲目に同パルティータ1番からサラバント。サラバントでの深い響きにとても感動した。CD新譜が欲しくなる。
休憩後にいよいよシューベルトのグレイト。自分にとっては難解なイメージのある曲だ。どの楽章も徹頭徹尾、深淵かつ重厚といった気がする。気が抜けないというか、正直少しヘビーである。その印象は今回も変わらなかった。P・ヤルヴィらしい少し早めのテンポで強弱のメリハリのある運び。カンマーフィルのいずれも素晴らしい演奏。でも曲は重かった。
そして最後にアンコールで演奏されたのが、シベリウス作曲のアンダンテ・フェスティーボ。初めて聞く。この時、生まれて初めて音が見えた気がした。最後のティンパニー以外は弦楽パートのみで演奏されるのであるが、バイオリン・ビオラ・チェロ・そしてコントラバスから放たれた音の粒子が流れとなり、大きなうねりとなって観客の中へ入り込んでいったような錯覚を覚えた。チェロを弾く時、私のような下手でも稀に音が辺りの空気を巻き込んだように感じることがある。彼らの演奏はそれが曲の間続き、ホール内の空気が共鳴していたのだろうか。何とも不思議な体験だった。
終わってみればあっという間の2時間半であった。