イート・ア・ピーチ

なんてことはないようなジャケットだが、トラックに書かれた”ALLMAN BROTHERS BAND”の文字を見つけた時、ピピッとくるものがあった。2枚組でジャケットに汚れがあるということで1,100円だった。高いか安いかよくわからないが、買うべきだと心が命じたようだった。帰って調べると、『EAT A PEACH』という、デュアン・オールマン最後のアルバムと知る。なんだか少し重いものを感じてしばらく放っていたが、ようやく聴いた。中には20分近い長い曲もあるのだが、飽きることなく通して聞くことができた。中でも圧巻は、C面4曲目から5曲目である。C面はどれもデュアン・オールマンの演奏が入っているそうだが、特に5曲目の「Little Martha」は、ツイン・アコースティックギターの響きが胸に染みる。水上はるこ氏のライナー・ノーツを引用する。
”デュアンとディッキーのアコウスティック・ギターだけの曲。ロック・ギターといえば、単に荒々しく粗野なものと信じ込んでいる人々もいるが、デュアンとディッキーの、たった2本のギターから、これほどに人間的で温かいやさしさが感じられるのだ。この曲は、オールマン・ブラザーズ・バンドのコンサートが終了した後、会場に流されるいわばエンディング・テーマであり、私はこの曲を聞くたびに、人影まばらなコンサート・ホールの寒々とした大気の中で立ち去りかねてポツンと座っていた時の、何ともやるせない、それでいて満たされたような気分を思い出す。”