秋の読書2021;寺島靖国編

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寺島靖国のジャズ本を古本屋でまとめ買いした。3冊は、寺島氏単独の著作で、いずれもジャズ月間誌などに掲載された文章を編集したもの。あと1冊は、盟友・安原顕との対談集である。
何年か振りで三宮の高架下商店街を覗いた。阪急三宮駅側の一部だけだが、その中に2年ほど前にオープンしたという古本屋があった。店先の手頃な価格の本に混じって、音楽CDや映画のDVDも並んでいた。面白いので中に入り、村上春樹のジャズ本でもないかと探した。しかし、あるのはデビュー小説の文庫本だけだった(その時、この小説にジャズや音楽の話が色々出てくるとは知らなかった)。続いて手前に積み上げられた新書や文庫の山を崩していくと、出てきたのが上記の4冊だ。
いずれも2001年の出版である。『JAZZジャイアンツ・・・』の安原氏はその2年後には亡くなっているので貴重な対談となっている。”毒をくらわば皿まで”的な60過ぎたオッサン二人が、時に正反対、時に共感し合うやりとりが非常に面白い。両者とも本当によく古いものから新しいのまでJAZZをよく研究されておられ、感心するばかり。おかげで、読者は労せずして良いものだけを聴くことができる。
『JAZZを聴く・・・』は、耳で聴き、目で音楽を見て、本能で受け止め、音楽の体臭を嗅ぎ取り、ライブを目の前で味わい、最後に良い音源は足で稼げとの宣託である。『ここを聴け・・・』は雑誌掲載文を集めたものに書き下ろしを加えた再編集本のようだ。そのためか内容が少しまとまりを欠いている。とはいえ、いつもの寺島節は健在である。「4ビートジャズ」「エリック・アレキサンダー」が頻出する。『新しいJAZZ・・・』は、1990年代当時の新しいジャズ・ミュージック・シーンが描かれている(この頃が仕事と家庭に精一杯で、最も音楽から遠ざかっていた)。いずれも文章が巧みで惹きつけられる。聴いたことのないミュージシャンをまるで聴き知っていたような気にしてくれる。時にはあけすけ過ぎてこちらが戸惑う部分もあるが、概して正直な気持ちの吐露という点で好ましい。

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こちらは以前に読んだ2冊。『辛口JAZZノート』は寺島氏のごく初期の本であるらしく、鼻息の荒さが文章の端々にみなぎっていた。『感情的・・・』は帯にもあるように、アルバムジャケットがカラーで載っていて、魅力がいっぱいだった。読後に改めてジャズをもっと幅広く聴いてみたいと思わせてくれた。