CT フランコ・ファジョーリ日本公演はすごい

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齢50幾年オペラ鑑賞未経験、にもかかわらず、芸文こと兵庫県立芸術文化センターで行われたフランコ・ファージョーリ氏とヴェニスバロック・オーケストラの日本公演「ヘンデルのオペラ・アリア名曲集」へ行って来た。パンフレットによるとファジョーリ氏は、『1981年アルゼンチン生まれ。カウンタテナー歌手として初めてドイツ・グラモフォンと独占契約を結び、本年2作目のCD「ヘンデルのアリア集」が発売され、絶賛を博した。いまやバロックから19世紀初頭のベルカント・オペラのもっとも輝くスターのひとりとして、不動の地位を築いている』とある。そんなコンサートへ行こうと思ったのは、いきなりオペラ鑑賞ではなく、まずはアリア集からというノリ。演奏もバロック専門オーケストラということで先般読んだ、皆川達夫著「バロック音楽」の世界を眼で耳で体験できる。
前半と後半に分かれそれぞれアリア4曲・器楽曲2曲という構成。オーケストラは、第一バイオリン4・第二バイオリン3・ビオラ2・チェロ2・コントラバス2・ファゴット1・チェンバロ1と小編成での来日。もちろんチェロはエンドピン無しのバロックスタイルにガット弦、ただし4弦。そこにカウンターテナー1名で、2000名収容の大ホールはきついのでは?そんな心配も前から7列目では関係なかった。チェロとチェンバロ以外が立って演奏するスタイルで、体でリズムをとるノリのよいメンバーも。そして2曲目から登場のファジョーリ氏は、思ったより小柄だが小顔のため8頭身。左足を前に出し、右足を少し引いて膝を曲げ、左腕を腰辺りまで下げ、右腕は手を軽く握り胸の辺りへ。まるで指パッチンをしているよう(たとえが古い!)。そして、曲の世界へ入り込んだかのような表情で歌い出す。声量は決して迫力満点というほどではないが、澄み切ったハイトーンボイスは広いホールにさわやかな響きをもたらした。口を少しすぼめてうつむき加減で小刻みにピチカートするような発声、上体を少し反らし胸と腹を膨らませて高音を響き渡らせる発声。様々な発声法を使い分け感情豊かに歌う。残念ながらすべて初めて聞くアリアは意味不明。それでもタイトルから想像する情景が、ファジョーリ氏の表情や身振りと合わせて十二分に感じられた。
20分の休憩を挟んで2時間ほどのプログラムも終盤になるとかなり熱を帯びて来た。圧巻はアンコール2曲目、ヘンデルの歌劇「リナルド」から「私を泣かせてください」。(後で調べると、ファジョーリ氏はLascia ch’io pianga(ラシャ・キオ・ピアンガ)といったようだ)。ファジョーリ氏が客席に向かって知ってますか?と尋ねると周囲でうなずく方多数。イタリア語で返事された方も。まずそこですごいと思ったが、それは序の口。曲の途中でファジョーリ氏が客席に向かって皆さんも歌ってと手で合図。すると、何ということだ。ホール内が大合唱しているではないか。年配のおばさん達は多くが合唱団に所属している方達だった。そのまま感激のフィナーレへ。サイン会はもちろん長蛇の列。折り返してエントランスホールへつながった最後尾は入り口から外に伸びていた。ファジョーリ人気恐るべし。
私はバロック音楽を眼と耳で楽しみ、初めてのカウンターテナーを堪能したので大満足。サインをあきらめそのまま帰宅した。