リスト『愛の夢』にチャレンジ

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フランツ・リスト(1811−1886)28歳頃の肖像<Wikipediaより>

来年年明けの発表会での曲目がフランツ・リスト作曲『愛の夢 第3番 変イ長調』に決まった。自分で選んだナポリ民謡『オー・ソレ・ミーオ』は先生にあっさり却下された。簡単な曲を選んで楽しようとしてると見透かされたか。前方にいくつもの高いハードルが並んでいるような気分である。

「3つの夜想曲(やそうきょく/ノクターン)」という副題を持つ。第3番が特に有名で、この曲だけ演奏されることが多い。当初はソプラノ向けの歌曲として作曲されたが、1850年頃に作曲者自身がピアノ独奏版に編曲したもの。元々の第3番の歌詞は、ドイツの詩人フェルディナント・フライリヒラート(Ferdinand Freiligrath/1810-1876)の詩集「Zwischen den Garben」から「O lieb, so lang du lieben kannst!(おお、愛しうる限り愛せ)」の詩が用いられている

歌詞(ドイツ語)・日本語訳(意訳)

O lieb, so lang du lieben kannst! O lieb, so lang du lieben magst!
Die Stunde kommt, die Stunde kommt, Wo du an Gräbern stehst und klagst!
おお、愛しうる限り愛せ! その時は来る その時は来るのだ
汝が墓の前で嘆き悲しむその時が

Und sorge, daß dein Herze glüht Und Liebe hegt und Liebe trägt,
So lang ihm noch ein ander Herz In Liebe warm entgegenschlägt!
心を尽くすのだ 汝の心が燃え上がり 愛を育み 愛を携えるように
愛によってもう一つの心が 温かい鼓動を続ける限り

Und wer dir seine Brust erschließt, O tu ihm, was u kannst, zulieb!
Und mach ihm jede Stunde froh, Und mach ihm keine Stunde trüb!
汝に心開く者あらば 愛のために尽くせ
どんな時も彼の者を喜ばせよ どんな時も悲しませてはならない

Und hüte deine Zunge wohl, Bald ist ein böses Wort gesagt!
O Gott, es war nicht bös gemeint - Der Andre aber geht und klagt.
言葉には気をつけよ 悪い言葉はすぐに口をすべる
「ああ神よ、誤解です!」と嘆いても 彼の者は悲しみ立ち去りゆく
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歌詞は何とも甘い香りが漂う曲で少々気恥ずかしい。もともとは歌曲で、後にリスト自身がピアノ独奏用に編曲したとのことだが、チェロ譜はピアノ譜ともかなり異なるようだ。1回目の練習ということでわずか13小節だったが、移弦の連続で左手がウロウロ行き先に迷うのだった。

<2018年10月18日追記>
これを機会にフランツ・リストについて少し調べてみた。ドイツ移民であるにもかかわらずハンガリー人として振る舞おうとしたこと。にもかかわらずハンガリー語は話せなかったこと。幼い頃から音楽の教育を受け、指を長くするトレーニングをし両手で4オクターブを弾けたこと。著名な作曲家の新作も初見で完璧に弾きこなしたり、その場で編曲までしたこと。2回目以降は本人の自由な編曲により元の曲とは違うものになっていたこと。貴族婦人との駆け落ち同然の同棲を2度経験し、初めの同棲時代に3人の子をもうけ、そのうちの1人が最終的にワグナー夫人となったコジマであること。などなど。音楽好きの方なら常識かもしれないが、始めて知り驚いた。
彼のピアノ演奏は完璧であり、かつ繊細ながら情熱的だったため、演奏中にピアノが壊れることもあった。ベーゼンドルファー(あの五味康祐が娘の為に購入し愛したピアノブランド)はその激しい演奏に耐えたことで有名になったそうだ。リストを敬愛するランランのタッチが深く激しいことの理由がわかった気がした。