CD音質改善策

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秋風が感じられるようになり、少し若さを取り戻した愛犬

「芸術の秋」を気取る訳ではないが、何せ発熱量が多い真空管アンプで再生する我が家のオーディオ装置はこれからが本領発揮である。先日購入した月刊オーディオ・アクセサリー170号に載っていた、福田屋直伝『貴重なCDのクリーニング&グレードアップ術』を参考にして、サンワ・サプライのCDクリーナー(CD-R54KT)とCDプレーヤーのレンズクリーナー(誌面にあった湿式CD-MDWではなく乾式CD-MDD)を使ってみた。いずれも600円台のリーズナブル価格。効果のほどは、福田雅光先生がいわれる通り抜群である。以前から収録時間の長いCDで終盤プチ・プチと音がするのが気になっていた。てっきり機械の不具合と思い、近々修理に出そうと考えていた。ところがレンズクリーナーを1回使っただけで、どうも解消したようだ。さらに、CDクリーナーを使用すると音がサラサラになり、音数が増えたような気がする。いや、そうに違いない。
これで「秋の夜長」、台風で台無しの週末を楽しく過ごせる。

ヴィヴァルディのチェロソナタ

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振り返った少女の瞳にドキッとさせられるジャケットが印象的

現在2度目の通読に挑戦している皆川達夫著『バロック音楽』(講談社学術文庫)の影響で、ヴィヴァルディのチェロソナタをジャン=ギアン・ケラスの演奏で聴いた。もちろんCD(輸入盤。日本盤は11月予定)で。ケラスはインターネット上で見る顔写真から若手かと思っていたが、プロフィールを見ると1967年生まれとある。まさに円熟味を帯びたマエストロか、あるいは音楽界では未だ若手か?
さてその演奏はというと、全般を通じて淡々と美しい調べを紡いでいる感じ。あまり感情的にならず、かといって暖かみは失わず。作曲年代からかノンヴィブラートで、極端な強弱もなく。これがバロック盛期の宮廷音楽というものか。でもよく聴くと、2番の4楽章アレグロでは結構激しい部分があったりもする。またハープシコードとの絡みも面白い。他にテオルボ(?)という楽器が加わっていたり、チェロが2台になる部分もあるらしいがわからなかった。聴き込んでいくともっと楽しめるような気がする。

<2018年9月29日追記>
上記に大幅な修正が必要とわかった。本日音量を上げて聴いたらまるで別な演奏。出だしの5番2楽章アレグロから低音の沈み込みが大きくお腹にドンと来る。楽器こそガット弦を使用したチェロやハープシコード古楽器ばかりだが、勢いはロックのように生き生きとしている。録音が良いのも関係しているだろう。広いダイナミックレンジを十分に使って迫力満点である。

『オーディオ巡礼』を読む

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五味康祐(ごみやすすけ)氏のエッセイ集3冊めは、ステレオサウンド誌上で1966年から1979年の間に掲載された「オーディオ巡礼」である。かろうじてお亡くなりになる直前のものはオンタイムで読んでいたと思われるが、今回初めて目にしたと同じであろう。それにしても前の2冊にも増して辛辣なというか、思い切った内容ばかりである。オーディオを語りながらご自身の人生をたどるその文章は、まるで読者の身も斬られるようである。ここまで赤裸々にする必要があったのかとも思う。
繰り返し繰り返し、自身の貧しかった頃に本物の音楽を聴く為に、そのオーディオ装置を手に入れる為に立ち直ったことが述べられている。そこまでの音楽に対する理解や情熱が羨ましい。自分のポンコツな脳がうらめしい。もっと音楽に感動したい。

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狭いベランダに咲くペチュニアの花一つにもこれだけの表情がある

佐渡裕の『天地創造』

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当時首席指揮者を務めていた佐渡裕が楽団の存亡の危機を救うべく2000年にリリースしたアルバム。サティの曲をめずらしい管弦楽で振っている。
さあいよいよPAC定期演奏会の2018-2019シーズンが始まった。今シーズンは前から4列目で昨シーズンよりやや後ろ。相変わらずのかぶりつき(とても気に入っている)。今日の曲目は何と1曲のみアンコールもなし、それもそのはず、休憩を挟んで全曲3部で110分を超える大曲である。ハイドン晩年、円熟期のオラトリオ『天地創造』。全曲を聴くのは今日が初めて。
先週読んだ五味御大のエッセイに感化され、何か心で聴いてやろうと意気込んでいたが、何のことはない。声部の歌詞をパンフレットで追いながら曲を理解するのが精一杯であった。
それにしてもハイドンは素晴らしい。チェロ協奏曲が大好きで、交響曲もその素朴さが気に入っている。それに加えて宗教曲も大変素晴らしい。打楽器や管楽器の迫力を駆使して畏敬の念を表すのではなく、あくまで弦楽器を軸に声部と一体で声高らかに神の偉業「天地創造」を讃えているところが素晴らしい。精神性が感じられた。特にレチタティーヴォで声部に合わせるチェロソロが良かった。音楽的理解に乏しいが、なかなか声部の方々と息が合っていたのではないか。今日はPACメンバーの佐々木賢二君が首席。初めおっかなびっくりに見えたのだが、どうして大したものだ。演奏終了後にヴォーカリスト全員から何度も声をかけられ握手を求められていた。いや本当に立派。
そして、私は終了後のサイン会で念願の佐渡さんにサインを頂き、握手を求めたのであった。

五味康祐を読む

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連続の台風・長雨、週末外に出る機会がめっきり減っている。そんな時は部屋でじっと好きな音楽を聴きながら本を読むのが一番である。インターネットでオーディオ関係を調べていて出会った懐かしい名前「五味康祐」、その人のエッセイ集を2冊読んだ。中高時代にオーディオ雑誌でよく目にしたその名を、恥ずかしながら「ごみこうすけ」と記憶していた。正しくは、「ごみやすすけ」である。剣豪小説家でありオーディオ評論家と思っていた。これも誤りでオーディオ評論をするのではなく、いい音楽を聴く為の悪戦苦闘を綴っておられたのだと今回わかった。
まず1冊めは、『西方の音』(中公文庫刊)。作者の西洋音楽への憧憬・洞察といったものが、オーディオ機器への果てのない願望となった事などを綴ったエッセイ、といって良いのではないか。オーディオ機器を巡る批評や悲喜こもごもの出来事を通じて西洋音楽への熱い思いが伝わってくる。それにしても1曲1曲への踏み込みが半端でなく、実体験と結びつける語り口も鋭い。
そして2冊めは、『いい音 いい音楽』(中公文庫刊)。上記『西方の音』のあとで読んだため、各章で文庫本で2ページほどの短い文に込められた思いは十分に伝わる。FMが音楽ソースとしてレコードと同等かそれ以上に尊ばれている状況は東京ならではか。今でも関西はFM電波の状態が悪いなと感じることが多い。そして、オープンリールテープの音の良さを折りに触れ述べておられるが、当方の少ない経験からもその通りと思う。まさに今見直されているのは、その証しであろう。あとがきに娘さんが書かれた「父と音楽」は、理想的な親子の心の交流が感じられ、うらやましい。

今日はこれから、PAC第108回定期演奏会に出かける。指揮は芸術監督・佐渡裕、曲目はハイドン作曲のオラトリオ「天地創造」である。五味節を堪能した直後に、この曲を如何に感じることが出来るか。今この日記を打ち込みながら、同曲を聴いて予習している。